生物系研究部第2生物活性研究部
研究概要
「第2生物活性研究部」では、世界的に問題となっている薬剤耐性菌に有効な新薬を開発すべく、独自のスクリーニング系を構築し、微生物代謝産物などから目的の効果を示す化合物を探索しています。そして、得られた化合物の作用機構を解明するとともに、所を挙げて新薬候補化合物の創出を目指しています。
さらに「第2生物活性研究部」は、多様性に富んだスクリーニングソース確保のため、自然界から有用な微生物を新たに分離し、独創性の高い微生物ライブラリーを構築しています。
共同研究等のご相談については、知的財産情報部()までご連絡ください。
メンバー
部長 五十嵐 雅之
特任部長 長田 裕之
理化学研究所 環境資源科学研究センター 技術基盤部門
化合物リソース開発研究ユニット/創薬ケミカルバンク基盤ユニット
主席研究員 村松 秀行
主任研究員 橋爪 秀樹
主任研究員 石﨑 仁將
上級研究員 竹花 康弘
上級研究員 遠山 茂広
上級研究員 波多野 和樹
研究員 梅北 まや
研究員 林 千草
研究員 堀江(澁谷) 優子
特任研究員 松本 厚子
博士研究員 次田 篤史
アドバイザー 一色 邦夫
アドバイザー 塩見 和朗
テクニカルスタッフ 有坂 理恵
テクニカルスタッフ 池田 のり子
テクニカルスタッフ 海野 里美
テクニカルスタッフ 蔵品 真理
テクニカルスタッフ 地曳 さやか
テクニカルスタッフ 高橋 清香
テクニカルスタッフ 長坂 亮子
テクニカルスタッフ 布施 涼子
テクニカルスタッフ 吉田 珠実
大学院生 駒形 万喜子
大学院生 鈴木 昭寛
大学院生 渡邊 駿介
他上級研究員1名
テーマ
テーマ概要
1. 微生物ライブラリー、培養ブロスライブラリー、化合物ライブラリー
<微生物ライブラリー>
日本全国各地の土壌、落葉、海泥、昆虫類より放線菌株を分離・収集しています。収集した株は形態による特徴づけや16S rRNA遺伝子配列による系統情報の取得を行っています。放線菌以外のバクテリア株や糸状菌株の収集も行っています。
放線菌及びその他バクテリア株 | 約40,000株 (内、約25,000株は16S rRNA遺伝子部分配列保有) |
糸状菌株 | 約5,000株 (内、約3,600株は28S rRNA遺伝子D1D2領域配列保有) |
<培養ブロスライブラリー>
放線菌及びその他バクテリア株由来 | 約24,000サンプル |
糸状菌株由来 | 約500サンプル |
放線菌及びその他バクテリア株 |
約40,000株 (内、約5,000株は16S rRNA遺伝子部分配列保有) |
糸状菌株 |
約5,000株 (内、約3,600株は28S rRNA遺伝子D1D2領域配列保有) |
<培養ブロスライブラリー>
放線菌及びその他バクテリア株由来 |
約24,000サンプル |
糸状菌株由来 |
約500サンプル |
<化合物ライブラリー>
微化研で取得された天然物関連化合物約12,500化合物をはじめ、合成化合物約4,500化合物、市販化合物約30,000化合物、合計約47,000化合物からなる化合物ライブラリーを保有しています。
・上記の培養ブロスライブラリー・化合物ライブラリーに基づく共同研究についてはご相談ください。
リンク:放線菌株の一例(肉眼観察・電子顕微鏡観察)
2. 抗菌活性を示す化合物の探索
人類は今も病原菌を制圧できておらず、それどころか、2050年には病原菌による死者が年間1,000万人を超え、がんによる死者数を超えるかもしれないとする予測さえあります。
第2生物活性研究部では、現在世界的に問題となっている下記の病原細菌に有効な化合物の開発に取り組んでいます。時宜にかなった化合物を提供するため、臨床分離株の収集も積極的に行っており、これまでに収集した菌株は、実験室株・臨床分離株を合わせて2000株近くにのぼります。また、必要に応じて遺伝子改変株の作成も行っています。
・多剤耐性グラム陰性菌
Acinetobacter baumannii, Pseudomonas aeruginosa
Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae (CRE)
・薬剤耐性淋菌
・多剤耐性結核菌、非結核性抗酸菌
Mycobacterium tuberculosis, M. avium/intracellulare (MAC), M. abscessus
・薬剤耐性グラム陽性菌
Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)
Vancomycin-Resistant Enterococci (VRE)
3. 新しい抗菌化合物の作用機構の解析
多剤耐性菌の発生が深刻化している現在、作用機序不明の薬剤は受け入れられないと考えています。微化研では、有望化合物については開発の初期段階で作用機序の解析研究を開始します。
4. 大量培養・後処理装置
・動物実験などに対応するため、大型の培養装置、後処理装置を保有し、数グラム~数キログラムの化合物を取得しています。
<大量培養装置>
・培養槽 VE1000型 600L (株式会社 丸菱バイオエンジ)
・培養槽 MPF-U3型 200L (株式会社 丸菱バイオエンジ)
・培養槽 MSJ-U3型 30L 2基 (株式会社 丸菱バイオエンジ)
<大量ろ過装置>
・フィルタープレス FP-25S-CL (株式会社 平工製作所)
・セラミックフィルター SA453K (日本濾水機工業株式会社)
<大量濃縮装置>
・大型ロータリーエバポレーター N-21 (東京理化器械株式会社)
・薄膜式エバポレーター F-70 (東京理化器械株式会社)
<その他>
・バーチス自動凍結真空乾燥機 FM-25-EL-VP (SP Scientific)
化合物の大量取得のための大量培養、生産性向上研究などの共同研究についてもご相談ください。
5. 微化研化合物の再評価による新たな有用性の開発
微化研で発見された天然化合物を新たな評価方法で新しい有用性について研究しています。現在、抗原虫活性を指標にした微化研化合物の再評価を行い、新たな有用化合物の開発を進めています。さらに原虫感染症の治療および予防につながる有効なターゲットの探索を質量分析および顕微鏡観測によって行っています。
参考 さまざまな放線菌
寒天培地上に生育した放線菌株
放線菌株の電子顕微鏡写真