第3生物活性研究部

研究部概要

第3生物活性研究部では、生体反応の素過程を、分子生物学・生化学(酵素学)・細胞生物学の手法を駆使して解明することを目的とする。その中から生まれる創薬研究を自ら推進するとともに、新規化合物の作用機序検証系の構築などを行い、微化研全体の創薬研究を技術面から支える。具体的には、ウイルス疾患の発症機構の解明を追求するとともに、得られた知見に基づく抗ウイルス剤の開発や新たな検出法への活用を目指す。さらに、難治性筋疾患に関する創薬研究を推進する。

テーマ

1. インフルエンザウイルス研究

  • インフルエンザウイルスの増殖の過程は、①ウイルス粒子の宿主細胞への吸着、②エンドサイトーシスによる細胞内侵入、③膜融合によるウイルスゲノムの細胞質への放出、④核内におけるゲノムの転写・複製、⑤新生したウイルスタンパク質およびゲノムの集合、そして⑥子孫ウイルス粒子の出芽と放出から成り立つ(図)。従って、これらの過程のいずれかを遮断することによりウイルスの増殖を抑制することが可能となる。実際、既存の抗インフルエンザウイルス薬であるアマンタジンは膜融合(③)を、また同タミフルやリレンザは子孫ウイルスの放出(⑥)を阻害することにより治療効果を示すとされる。しかしながら、これらに耐性をもつウイルスが高率に出現してきたことから、新たな治療薬の開発が急務となっている。このような背景から、我々はゲノムの転写・複製(④)およびウイルス粒子形成(⑤)に着目し、これら過程の分子機構を酵素化学的および分子遺伝学的に明らかにするとともに、得られた成果から新たな発想に基づいた抗インフルエンザウイルス薬やワクチンの開発を目指す。

Fig.1 インフルエンザウイルスのライフサイクル
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2. レトロウイルス(HTLV、HIV)研究

  • ヒトT 細胞白血病ウイルス(HTLV-1)により腫瘍化したT 細胞(ATL)は化学療法耐性で予後不良の悪性リンパ腫である。本症例は日本人に保因者が多く、一部のHTLV キャリアーが発症するHTLV 関連疾患の発症の予測および、その効果的な治療薬の開発が急務である。一方、現在の抗HIV 治療において、数種の抗レトロウイルス薬を組み合わせる多剤併用療法(HAART)が有効であるが、HAART の処方により血液中のウイルス量は検出限界以下と判断された場合においても、ウイルスを産生していない潜伏感染化状態や、薬剤をかいくぐり、低レベルで小規模なウイルス産生を続けている細胞が患者体内に存在し続けていることがHIV 感染症の根治、根絶に対する障壁となっている。
  • レトロウイルス研究グループではこれらの問題に着目し、HTLV に関してはその発症のメカニズムを解明すると共にATL 発症予防および治療法の開発を目指した分子標的の同定を進めている。HIV に関してはその転写レベルにおけるHIV-1 潜伏感染化の分子機構の解明を追求するとともに、HIV患者体内における潜伏感染化ウイルスの効果的な検出法(体外診断薬)の確立を目指している。

3. B型肝炎ウイルス研究

  • B 型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus: HBV)の持続感染による慢性肝炎は、肝硬変・肝癌の発症リスクを著しく高めることから、抗ウイルス剤による治療が必要となる。現在、治療にはインターフェロンと核酸アナログ製剤が用いられている。しかし、インターフェロンによる治療効果は投与患者の20 〜40% に留まり、高頻度に副作用が認められる。また、核酸アナログ製剤は高率な治療効果を示すものの、薬剤耐性ウイルスの出現が問題となっている。このことから、新たな薬剤の開発により治療戦略を拡充することが切望されている。我々はHBV の特異なゲノム複製機構(図)に着目し、この過程を制御する低分子化合物の探索研究を進め、抗HBV 薬の創製を目指す。

Fig.2 HBV ゲノムの複製サイクル
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4. 難治性神経筋疾患に対する治療薬を目指した基盤研究

  • 難治性神経筋疾患は、多くが遺伝性疾患であり現在もほとんどが治療法が無い。難治性神経筋疾患の治療標的となる分子を標的とした化合物を探索するセルベーススクリーニング系を構築し、微生物培養物または化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行っている。また、難治性神経筋疾患の一つである脊髄性筋萎縮症の治験プロジェクトに参画し、原因遺伝子産物であるSMN 蛋白質の新規測定法の開発やその技術を基に薬剤探索スクリーニング系の構築を進めている。