微生物酵素を利用した海産廃棄物の処理と廃水処理システムの開発

当プロジェクトでは、微生物が産生する酵素を利用した、クラゲやムラサキイガイなど海産廃棄物の分解処理および廃水処理システムの開発を行っている。

火力発電所では、冷却水として大量の海水を取水するため、夏場を中心に、大量発生したクラゲが取水口を塞ぎ発電に支障をきたすことがある。そのため、発電所ではクラゲを取水口で回収し、天日乾燥や焼却処理を行っているが、スペースや費用、処理時に発生する臭気などが問題となっている。今回開発したシステムは、微生物が産生する酵素、および優先化繊毛虫を利用することにより、クラゲを放流可能な排水レベルまで短時間・低コストで処理することを可能にした。また、処理が迅速なため、臭気の発生も最小限に抑制される。同様のシステムを用いることで、クラゲ以外(貝肉等)の処理も可能である。現在、実用化に向けた実証実験を行っている。

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1. 発電所におけるクラゲの大量発生による被害(取水制限、発電停止など)の事例

クラゲの大量発生により発電所での電力供給が制限される事態が頻繁に起きている。

日付 発電所 発表
1999年7月7日 柏崎刈羽原子力発電所1~3号機 東京電力発表
2006年7月19日 浜岡原子力発電所3および4号機 中部電力発表
2009年6月 姫路第1発電所5および6号機 時事通信
2011年6月23日 島根原子力発電所2号機 中国電力発表
2012年4月~6月 火力発電所で41回の出力低下 関西電力発表
2012年6月22日 南港発電所2および3号機 関西電力発表
2012年6月22日 姫路第2発電所4および5号機 関西電力発表
2012年7月8日 大飯原子力発電所3号機 関西電力発表
2012年7月19日 姫路第1発電所1および2号機 関西電力発表
2012年7月27日 赤穂火力発電所2号機 関西電力発表
2012年7月28日 水島火力発電所1号機 中国電力発表

2. 現在行われているクラゲ処理方法と問題点

陸揚げしたクラゲはどのように処理されているのだろうか?

冷却水にクラゲが入らないように、取水口入口には防除網が張ってあることが多いが、クラゲが全面に張り付くと取水ができなくなるため、網の下部には隙間がある。クラゲはそこから侵入する。

<図 発電所における冷却水(海水)の取水とクラゲの被害>
発電所における冷却水(海水)の取水とクラゲの被害

陸揚げしたクラゲは回転式除塵機(ロータリースクリーン)または人海戦術で回収されるが、回収したクラゲは現在、以下の方法で廃棄処理されている。

処理方法 問題点
焼却処理 クラゲはほとんどが海水であるため、焼却には多大なエネルギーを必要とする。
埋め立て 埋設できる場所には限りがある。
天日乾燥 乾燥場所の確保と腐敗臭。
化学薬品処理 処理によりクラゲは凝集するが、処理後の廃液処理・中和が必要。
海洋投棄 ロンドン条約、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により、現在は違法。
熱水処理 クラゲは完全に液体にはならず、残渣が生じる。

そこで、処理が必要な時だけ低コスト、省スペース、短時間でのクラゲ処理が求められている。

3. 酵素によるクラゲ処理のメリット

1.大量の陸揚げしたクラゲを低コストで処理できる。
2.適法(廃棄物処理法、水質汚濁防止法その他条例等)に処理ができる。
3.処理が迅速なので、腐敗臭の発生は極めて少ない。
4.処理装置は可搬式なので、クラゲが発生しない時期には設置しなくてもよい。
5.同じシステムでムラサキイガイなどの貝肉も処理できる。

4. 酵素分解法によるクラゲ処理システム

微生物酵素により、15~30分間でクラゲを液体化し、廃液を生物処理する。生物処理は6時間以内に行うことができる。生物処理は終末処理場で行われている活性汚泥法を単純化した方法(1種類の耐塩性繊毛虫を優占化)で、特別な知識や経験がなくても操作できる。生物処理後に廃液は清澄な上清と固体に自然分離させる(固液分離)。引き続き、上清は、凝集沈澱処理、活性炭ろ過などの高次処理を行なう。

<図 クラゲ分解処理概略図>
クラゲ分解処理概略図
※各工程間でクラゲの破砕、希釈、pH調整などは不要

①クラゲ分解工程

クラゲを分解槽に投入後、酵素液を1~2%量入れ(酵素活性50-100相当)、酵素活性を最大にするため40~50℃に加温する。クラゲ分解にあたり破砕は特に必要としない。迅速に処理するため、クラゲ溶解液の撹拌が必要。酵素は1度投入すれば、数回繰り返しの使用ができる。

②廃液処理工程

前工程で液体化したクラゲ廃液に、処理生物(繊毛虫)を投入後、約6時間曝気処理する。処理後、固体有機成分は数十分で自然沈降(固液分離)する。

③凝集沈澱工程

生物処理後の上澄みに対し、アルミニウム系凝集沈澱剤を使用。この処理によりさらに廃水は清澄化し、CODなどは低下する。凝集沈澱時にpHの調整は特に必要としない。

④活性炭ろ過工程

必要に応じて使用。

①~④の一連の処理により、CODMnは1500 → 2.4mg/L、SSは280 → 1mg/Lとなった。

用語の説明

  • 活性汚泥法:多種類の微生物群を用いた排水の生物処理法。下水処理場などで行われている。
  • CODMn(化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質量):水の水質基準の指標。海域と湖沼の環境基準に用いられている。法定排水基準値はそれぞれ160mg/L、200mg/L。

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